前 触 れ

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男と女がポートレートを見つめていた

 

「また会えた喜びの抱擁か」


男が云った

 

 


女は無言だった

 

 

 

「別れの口づけ‥」


女が消え入るように呟いた

 

 


男が写真を見つめ続ける女の横顔に視線を向けた

 

 

 

「最後の別れの口づけ」


女が自分に言い聞かせるようにはっきり云った

 

 

 


今にして思えばわかる


あれが終焉のプロローグだったと

 

 

 

 

物事には訳と前触れがある